新型コロナウイルス スイスで何が起こったか⑤5人超の集まり禁止

Swiss News

新型コロナウイルスの死亡者が世界で1万人を超えた2020年3月20日。感染者が6500人に上ったスイスでは、政府が5人超の集まりを禁止するというさらに厳しいロックダウンを発表しました。3月20〜23日の動きです。

世界の感染者1万人

3月20日(金) 感染者6516人 死亡75人

コロナの死亡者が世界で1万人を超えました。イタリアが3400人、中国が3100人。スイスでは75人に増えます。

ギー・パルムラン経済相が、欧州連合と協議しスイスへの医療物資輸出禁止の解除が決まったとツイッターで発表。スイスではこれまで、マスクなどの医療物資がドイツ国境などでストップしており、国内で在庫不足を懸念する声が挙がっていました。

ベルン市は、外出自粛を無視して集まる市民が多いとして、市内中心部の公園を閉鎖しました。ちょうど春の訪れと時期が重なっていたのが不運でした。これが真冬だったら、街の様子もまた違ったものになったかもしれません。

Stadt sperrt vier weitere Parks – So leer haben Sie die Bundesterrasse noch nie gesehen
Noch immer halten sich zahlreiche Bernerinnen und Berner, vor allem abends, nicht an die «Social Distancing»-Vorgaben des Bundes. Aus diesem Grund schliesst die...

チューリヒの司法業務も「ロックダウン」となります。州裁判所、地方裁判所、判事事務所は4月26日まで手続きが停止することになりました。

マスクを高額で転売

チューリヒ 警察マスクを高値で売った18歳の少年を逮捕したと発表。1枚0.5フラン(約50円)のマスクを5枚入り約200フラン(1枚4千円相当)で転売しようとしたらしいです。家宅捜索で数十枚のマスクも押収されました。スイスでもマスクの高額転売が少なからずあり、何件か摘発されています。

この日の12時半、スイス国内で医療関係者にお礼の拍手が行われました。

また、ティチーノ州の州医が地元の状況を「非常に深刻。感染拡大を止められるかどうかは私たち次第」「(用もなく出歩いて)他人に危険を振り撒くのは犯罪だ」と異例のコメントをします。ティチーノ州は直近24時間で7人が犠牲になり、新規感染者は834人。死亡者はのべ22人に上り、それだけ州の状況は逼迫していたといえます。

ソーシャルディスタンシングの徹底を呼び掛け、警察の取締りを始めていたチューリヒ州は結局、市民の憩いの場のチューリヒ湖畔を封鎖しました。ルールを無視する市民が減らなかったことが理由のようです。

ザワークラウトが大人気

災害時などは決まって缶詰や長期保存食品が買い占めの対象になりますが、スイスではなんとザワークラウトが大人気。国内の製造会社のところでは、注文が4倍に増えたそうです。ソーセージの付け合わせに必ず出てくるザワークラウト。スイスのスーパーでは常温保存できるものがたくさん売っています。

ロックダウンがさらに厳しく

感染者増に歯止めがかからず、公園や湖岸で集う人たちが後を絶たない危機意識の薄さを重く見た連邦内閣はこの日、5人を超える集まりは禁止するというさらに厳しい措置を出しました。違反すれば100フラン(約1万1000円)の罰金です。

ベルセ内相は「措置を真剣に受け止める最後のチャンスだ」と強い言葉で協力を促します。

政府の発表

企業、建設現場は政府の衛生対策、他人との距離を開ける指示を義務付け→守れない場合は州が閉鎖を命じる

全国民(特に65歳以上)に外出自粛を強く要請。外出は仕事、日用品の買い出し、他人の手伝いの時だけ

公園、散歩道、公共の場での5人を超える集まりを禁止。5人以下の場合も他人と2m以上の間隔を開ける守れない場合は罰金100フラン

国民に外出自粛を要請する代わりに、郵便、食品など日用品のオンライン配達は土日も営業を認めると発表しました。日曜営業、日曜の配達に必要な許可も不要としました。

またこの日、320億フラン(約3兆5200億円)の新たな経済対策公表します。13日のものと加え、経済支援措置は計400億フラン超(約4兆4000億円)に増えました。

・企業への追加の緊急融資:政府の保証付き融資に200億フラン(50万フランまで即時融資&政府が100%保証、それ以上は銀行が15%、政府が85%)。融資の限度枠は売上高の最大10% or 2000万フラン

・企業に対する社会保険料(国民年金、企業年金、障害者年金など)の支払いを猶予(個人事業主にも適用)

・企業には延滞利子なしで支払いの猶予を可能に。付加価値税、関税、その他の特別消費税の税率を2020年12月末まで0.0%に

短時間勤務補償の対象拡大:有期雇用、職業見習いにも適用。支給決定までの待機日数も撤廃

個人事業主も補償の対象に:イベントが中止になったフリーのアーティストも含む

・子供の休校で仕事ができない場合は収入の80%(最大1日196フラン)を補償。隔離措置に置かれた場合は10日間分を補償(個人事業主と被雇用者両方)

・文化部門の緊急支援・営業停止に伴う補償に2億8000万フラン(2カ月)

・スポーツ団体の財政支援に1億フラン・短時間労働補償支給までの待機日数を撤廃

・観光業界にも救済措置

※1フラン=110円

今回の措置は子供の休校で仕事ができない親への給与補償、個人事業主への補償、さらにスポーツや文化部門への財政出動が盛り込まれたのがポイントです。

また、外出禁止令が出るかどうかが最大の焦点でしたが、内閣は外出禁止令は出さないと断言。アラン・ベルセ内相は「人々の生活を機能させることが重要。派手な政策はしない。これがスイスのやり方だ」と言い切りました。

集中治療室の医療体制増強も急ピッチで進めます。保健庁のダニエル・コッホ氏は集中治療室のベッド数は現在800床で、今後少なくとも400床が増設予定と話しました。軍の支援で人工呼吸器も増やし、すでに複数がティチーノ州に運ばれていて、人工呼吸器付きのベッドが数百床増えると話しました。

ところで政府の今回のロックダウンですが、スイス公共放送のナタリー・クリステン記者によると、当初3つの案が検討されていたようです。

①ウーリ州モデル:65歳以上への外出制限

②夜間の外出禁止令(国民全員)

③オーストリアモデル:国民全員に外出禁止(仕事、買い出しは例外)

ベルセ内相が自分のinstagramで、ある「チャレンジ」をはじめます。それはスイス国内の3人の有名人を指名し、感染予防策を話してもらうというもの。その一人が男子テニスのロジャー・フェデラー選手でした。

英国はこの日、パブ、映画館、ナイトクラブ、カフェの営業停止を発表します。

スイス国内の経済界は今回の政府の経済支援を好意的に受け止めている、と地元紙が報じました。

イタリアは外出禁止令をさらに厳しくし、公園や緑地にも行かないよう呼びかけました。公共の場のスポーツも禁止しました。

3月21日(土)感染者7326人 死亡91人

国民に危機意識を持ってもらうため、シモネッタ・ソマルーガ大統領直筆サイン入りの書面を出し、直接訴えかけるという手に出ます。

また外務省はペルー、コロンビアから出国できなくなったスイス人旅行者630人のため、2機のチャーター機を出して帰還させると発表します。この時点で1万人以上のスイス人が国外にいました。

そしてフェデラー選手がベルセ内相のインスタチャレンジに応じました。SNSを宣伝の一つに愛用しているフェデラー選手、この反応の速さ。

Roger Federer: Diese Stars antworten auf die Berset-Challenge
Roger Federer hat die Herausforderung von Bundesrat Berset angenommen und eine Instagram-Challenge gestartet. Immer mehr Schweizer Sport-Stars nehmen teil.

中国はこの日、初めて国内感染者なしと公表します。

スペインでは感染者が2万5千人と前日から5千人以上増加。死亡者も1300人と、右肩上がりに数字が増えていきます。

ウーリ州の外出禁止令は、連邦内閣が「外出禁止令は出さない」という方針を決めたことを受け、わずか2日で撤回されました

一方、建設現場からは不満の声が上がります。物を運ぶ際は、どうしてもお互いに近づかなければならず、2m以上の距離を保つという政府の措置は「非現実的だ」と現場は訴えました。

後方支援にあたるスイス軍に感染者が増え始めます。軍はこの日の会見で、45人が感染したと公表しました。

ところで、コロナ患者が入院しているスイスの病院では、見舞いにいけない家族とどのように連絡を取っているのでしょうか。スイス公共放送のカメラが、病院の現場に入りました。患者の医療チームがスマホで自宅にいる家族と連絡を取り合う様子が紹介されています。

ロックダウンが始まり、いつもは観光客で大賑わいのチューリヒ中央駅前通りはガラガラです。

Bravo Zürich 👍👍👍👍👍Samstagmittag Ohne Kommentar 🖐Bleib zuhause!👌

Posted by Boban Radojkovic on Saturday, March 21, 2020

イタリアのコンテ首相が夜会見し、生活必需品を除く産業生産を停止すると発表。イタリアでは1日の死者は800人近くに上っていました。

またフランス・アルザス地域のコロナ患者をスイス、ドイツの病院が受け入れ始めます。

州VS国

3月22日(日)感染者7939人 死亡110人

ティチーノ州が再び国を先行します。今後少なくとも1週間、食品、医薬品などを除く産業生産を一律に停止すると発表したのです。65歳以上への外出制限も出しました。

連邦政府は2日前に「人数制限など政府の定める基準を守れば、企業や建設現場は稼働してもよい」と明言したばかり。相反する政策を出したティチーノ州と連邦政府の間に溝ができます。

ティチーノ州の決定に、地元の産業団体は反発します。スイス機械・電気・鉄鋼産業協会スイスメムのハンス・ヘス代表は「国民の益にならない」と州の決定を批判しました。

集中治療医師会(SGI)は日曜紙ゾンタークス・ツァイトゥングなどに対し「スイスで問題なのは人工呼吸器ではなく、集中治療室の医療スタッフ不足」と現場の声を伝えています。

ドイツは3人以上の集まりを禁止します。メルケル首相が隔離されることになりました。

3月23日(月) 感染者9187人 死亡137人

保健庁のダニエル・コッホ氏はこの日の会見で、1日の検査件数は6000件以上と公表します。

連邦司法警察省司法局(BJ/OFJ)のマルティン・ドゥンマームートゥ局長は、産業を一律に閉鎖するティチーノ州の措置は連邦内閣の措置を逸脱し、違法だと述べました。ジュネーブ州の建設現場一律営業禁止も違法だと語りました。

経済省経済管轄局(SECO)によると、短時間勤務補償の申請数は過去に例を見ないほど増加します。3月で2万1000事業所(31万5000人分)が申請。全労働力の6.1%に相当する数です。26%が飲食・ホテル、16%が芸術・エンターテイメント、レクリエーション部門、12%が物流・交通でした。

南部ヴァレー州のスキーリゾート、ヴェルビエの医師が地元紙に対し、同地域が感染のホットスポットになっているため閉鎖が必要だと訴えます。ただ州が国と協議の結果出した答えは「封鎖はしない」でした。

ゾロトゥルン州が自営業者向けに計1000万フランの財政出動を発表します。一定の条件を満たした人に2000フランを支給し、返金もしなくて良いというものでした。

ビール醸造所が消毒用アルコール

国内で手の消毒用アルコールが不足している問題で、バーゼルのビール醸造所が、自社のビールから消毒用アルコールを作る様子がスイス公共放送で取り上げられました。

欧州ではフランスが外出制限を延長。英国も厳しい外出制限令を出します。

コメント