スイスのカリン・ケラー・ズッター司法警察相が、国内紙タグブラット(Tagblatt)のインタビューで、内閣の新型コロナウイルス対策について語りました。以下は記事の全文を訳したものです。
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(以下は本文の訳です)
記者:あなたはすでに夏休みを予約しましたか?
司法相:はい。
詳しく教えてもらえますか?
ティチーノに行きます。
国境が閉まっているからですか?
いいえ、夫がスイスで休暇を過ごすのが好きだからです。私たちは(4月の)イースター休暇をティチーノで過ごす予定でしたが、(ロックダウンのため)キャンセルしていたんです。

ティチーノ州は国内初の感染者が出た場所で、今も最も影響を受けている州の一つです。
スイス国外へ旅行できるようになるはいつでしょう?
いつでも出国できますよ。問題は、その国への入国が許可されるかどうかです。私たちの周りの国はみんな、通常に戻りたいと思っています。各国担当相会議で私はそう聞きました。それがどれだけ早く実現できるか、それはわかりません。国家がパンデミックをある程度、安定させることができた時点で、すぐさま多くの人に入国を許し、再び危機を招きたいとは思わないでしょう。それは私もはっきり聞きました。我が国は二国間での調整も行っていきます。
秋の休暇は海外で過ごす予定ですか?
それについて言うのは時期尚早です。
あなたは今週、国境の段階的緩和を発表しました。 5月11日から、EU / EFTA諸国からの就労申請などの書類手続きが再開されます。スイスの国内失業率が増加した場合、これは理にかなうのでしょうか?
現時点の制限はまだとても厳しいです。 5月11日以降、越境労働者の数は、主に店やレストランの再開に伴って増加するでしょう。越境労働者の通過は今も認められています。EU・EFTA加盟国在住者からの申請に関しては、手続きが終わっていないもののみを再開しました。つまり3月25日以前に提出されたものですね。これらの人々はすでに(スイスの雇用主と)雇用契約を結んでいます。またもう一つ重要なことは、サービス提供者の裁量の余地がもう少し広くなることです。 6月8日に次の段階に進むことができれば、国内の失業者のために、彼らもまた求人登録要件を再活性化するでしょう。
それは全て経済面での国境緩和ですね。
EUの法務・内務担当相会合で示されたように、ヨーロッパ全体の主な関心は、仕事を目的とした商品の移動・人々の移動を保証することです。
しかし、例えばパートナーが国外に住むという人もいます。彼らは今、会うことが許されていません。それについては?
もちろん、国境閉鎖は恒久的なものではありません。配偶者・登録済みのパートナーは、現在入国可能です。5月11日からは、スイスとEU市民の外国人家族も、スイス国内で再会できるようになります。
内縁関係のカップルが会うことができないのは公正といえるのでしょうか?
会いたいという彼らの願いは理解しています。二人の間に子供がいるか、どちらかが病気になった場合は、現時点でも入国できます。それ以上は、人の移動を抑制するため、許可していません。誰が内縁関係にあるかそうでないかは、国境警備隊が検証できないのです。緊急の場合は、入国できます。このルールは、近隣諸国と比べると、部分的にはより厳しいですね。
これは、当事者には厳しいものです。
それは私の理想とするところではありません。しかし、パンデミックを抑制するためのルールです。そのため現在の例外規定に加え、経済的利益のあるものから許可するのです。他の人の移動は、疫学的理由により当面は制限されたままです。もちろん、リベラル主義者の一人として、私は旅行の自由が早く復活することを願っています。しかし、これは段階的に行わなければなりません。
コロナ関連の罰金は広く話題になりました。3月中旬以来4000件の罰金がありました。当事者は非常に恣意的だったと言っています。
国境警備隊は私の部署の管轄ではありません。しかし、私は国境警備隊の名誉のために一言言いたい。彼らは非常に困難なこの時期に、とても大変な業務をこなしています。(政府の)指示を実行します。(入国したいという)希望を否定しなければならない、その決定に満足している人はいないでしょう。
当事者が言っているのは、罰金に法的根拠がなかったということです。内閣も後付けで罰金を設けました。
税関管理は税関法に基づいています。内閣が出した命令では、買い物ツーリズムだけを禁止しました。国境警備隊の仕事を妨害するためです。国境警備隊がより正確なルールに基づいて業務が行えるよう、困難なケースに関する指示も再調整されました。
連邦議会は緊急事態に基づいて決定を下しています。つまりやりたい放題できる、ともいえる。
いいえ、連邦憲法は依然として適用されます。連邦内閣も民主的で法律に基づいた組織です。来週には連邦議会も開かれます。
緊急権に基づいて統治するのはどうでしたか?
緊急権は不可欠でした。リズムの面でも厳しいですが、連邦内閣はその責任を認識しています。議論は非常に慎重に行われました。決定には州やソーシャルパートナーなどのアクターを関与させることも試みました。
広範囲にわたる決定に関し、ウエリ・マウラー財務相は今週、次のように述べています。「財務相として、居心地の悪さを感じる」と。それについてはどう思います?
私が言えることはただひとつ、「執行部へようこそ!」です(笑)。冗談はさておき、ウエリ・マウラー氏は財務大臣、アラン・ベルセ氏は内務大臣、私は法務大臣です。しかし、連邦内閣は常に責任を共有します。個々のケースで個人的に異なる意見を持っている場合でも。
心配は無用?
危機的状況では、すべてを完璧に行うことはできません。完全主義者であったとしたら、もはや行動できなくなる。私たちは知識と信念を最大限に活用して意思決定を行います。しかし謙虚さを失わず、それを自覚する必要があります。私たちが決定したことは、現在の知見に基づいたものですが、あとになってから違う形の決定をすることもあるでしょう。
マウラー氏は、こんなことも言っています。治療は、病気そのものよりも有害なのだと。この国の多くの人たちは今、そう考えています。
連邦内閣は当初からバランスを重視してきました。国民とその健康は守らなければなりません。同時に、経済的損害をできるだけ低く抑えることも検討しました。そのために大きな決断をしました。でも、私たちの経済の70~80%は常に動いています。経済は再びその速度を取り戻せるよう、今我々は段階的に緩和を行っています。経済的損失は、マウラー氏の見解もそうですが、やはり甚大です。
連邦内閣は段階的緩和を加速させました。経済的利益への関心が突然増したように見えますが。
いいえ、この印象は正しくありません。私たちはすでに4月16日の時点で、4月29日の閣議に向け、飲食、スポーツ、レジャー部門の早期緩和を検討するよう、内務省に指示していました。
しかし内閣はそれを公表しませんでした。逆に、それが飲食業界の怒りに触れましたよ。
連邦内閣は、4月16日の段階的緩和におけるコミュニケーションが最適ではなかったことを認識しています。連邦内閣は、今後の予定と、どんなものを検討課題としているか、きちんと伝えませんでした。2番目のミスは、大規模小売店での制限緩和を廃止したこと。良かれと思ってやったのですが、コミュニケーションが不十分で、結局混乱しました。そのため撤回しました。

政府は5月11日の第二段階ロックダウン緩和前に大規模小売店の日用品以外の販売を解禁する、と発表したのですが、第二段階発令時まで営業を行えない他の小規模店舗から「不公平だ」と批判があがり、政府は結局それを撤回したのです。
連邦議会は危機の初期段階で高く評価されました。今は連邦内閣が政党、業界団体、議会の決定に左右されている印象を受けますが。
批判があるのはどの物事においても自然なことです。危機が深刻な場合、まずは全員で立ち向かいます。ロックダウンでは、美容室、衣料品店、ジムなど、すべてが平等に扱われました。段階的緩和では、さまざまな要素を考慮する必要があります。すると業界間で不平等が生じます。そこで批判が起こるのは当たり前です。議論されるのは当然だと思う。連邦内閣はそれについて説明し、自身の決定を正当化できなければなりません。
重要な訴訟が時効になり、軽犯罪は摘発されず、国外追放も停止中です。法務大臣としては喜ばしくないですね。
私たちは、司法を危機下でも機能させるために必要なことをしました。司法機関のロックダウン期間をいくらか延長し、民事訴訟がビデオ会議で行えるようにもしました。しかし、私たちは故意に一般的な期限の停止は設けませんでした。連邦内閣にとって、時効に介入することは論外でした。刑法では、時効は3年から30年です。新型コロナウイルスを理由とした時効への介入はありえません。
あなたは店主の娘でもあります。現在、レストランが5月11日に再開することになりましたが、厳しい制限もあります。この条件の全てにあなたは満足していますか?

政府はレストランの再開に関し、1テーブル4人まで、テーブル同士は2メートルの間隔を開ける、などの厳しい条件を設けました。
再開は願ってもないことです。
5月11日の予約はお済みですか?
いいえ、でも私は夫に言いました、またピザを食べにいこうねって。私たちは社交的な国ですから…
…誰もがそう見ているわけではありませんが。
確かに。しかし、私たちにとって、レストランへ行くことはある種の伝統です。社会的な生活に戻る方法を見つけることが重要です。ある条件下でこれが可能になるのなら、それは正しいと思います。
今回の危機は人の考えに大きな影響を及ぼしました。たとえロックダウンが緩和されたからといって、人々は買い物に出たり、パブでビールを楽しんだりするのを安全だと思っているのでしょうか。
すべての人々が同じというわけではありません。でも店やレストランに行きたいという需要はあるんです。重要のは、人々は自由であるということ。誰も強制されません。
多くの店主たちは、(政府の)厳しい制限下で再開することに価値があるのか、疑問に思っています。固定費は高いし、座席の数にも限りがあるでしょう。
すべてのレストランのオーナーは自分でその答えを見つけなければいけません。しかし、私は両親にどうするか聞きました。
それで?
レストランのオーナーにはさまざまなオプションがあります。たとえば、メニューを減らしてキッチンをフルに開けない、とか。ほら、詳しいでしょ。そういうことは私の両親の頭の中にもあったようです。もちろん、短時間労働補償を受けながら働いていた方がいいとは思います。
国境制限イニシアチブは9月に国民投票が行われる予定です。人々が国境を閉ざすことに慣れている時に、投票に向けた広報活動を再開することになります。

このイニシアチブ(国民発議)は保守系右派の国民党が出したもので、EUの「人の移動の自由」原則からスイスが離脱することを目指しています。
国境の封鎖は、通常の状況においては現実的ではありません。今日の国境通過量は60~70%少なくなっています。この国境体制を通常の経済状況で継続すると、巨大な封鎖が生じます。また、スイス人は旅行や移動の自由を大事に考えていると思います。
不況の影響はあるでしょうか?
国境制限イニシアチブは、人の移動の自由をやめ、EU内部市場へのアクセスを規制する二国間条約を破棄するよう求めるものです。私たちは不況にあります。世界的な経済状況も長期間緊迫した状態にあります。私はこの状況下において、スイス国民が自国経済を危険にさらすことはしない、それによって雇用の保全を危険にさらすことはないと確信しています。
コロナの後の生活について。何が楽しみですか?
友達や家族に会って、外食を共にしたい。また、連邦内閣が公共交通機関を使うなと言っている、なんてことを考えずに、トラムや電車に乗れる日がくるのが待ち遠しいです。
相手との距離を空けるルールを守っているかどうか、気をつけていますか。
私はオフィスとベルンのアパートの間を行き来するだけの生活です。ヴィールにいるときは森の中を散歩することもあります。私が接触する人たちと、私の移動範囲は非常に限られています。
気晴らしはどのように?
散歩、料理、読書、ドラマのシリーズ物を見る、ですね。
Netflix派ですか?
はい。FaudaとUnorthodoxを見ました。日頃はさまざまなことを調べたり、会談したりしているので、たまにそういう全く違う世界に飛び込めるのは嬉しいです。
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