研究所公認の安全な布マスク、スイスで開発中 新型コロナ

Swiss News

新型コロナウイルスに伴うロックダウンの段階的緩和が始まったスイスでは、マスクの需要が急増。そこで政府はスイス連邦工科大学の研究所、国内テキスタイル業界と連携し、保護力の高い布マスクの開発を進めています。厳しい検査をすでにクリアした企業も出てきました。

⭐️スイスのマスク事情⭐️

スイスでは4月27日から、ロックダウンの段階的緩和が始まりました。休校の解除、公共交通機関の通常ダイヤ再開などが今後予定されています。

マスクの一律着用は義務付けられていませんが、混雑した電車内で相手との濃厚接触が避けられない場合は「強く推奨」と言われています。美容室など至近距離でサービスを行う場所では、客との従業員双方のマスク着用がほぼ必須です。

そこで、使い捨て衛生マスクの代わりとなる布マスクが注目されていますが、マスク調達を管理する国防省のマルクス・ナエフ准将は普通の布で作ったマスクは、使い捨て衛生マスクの保護力の10%にも満たない」(4月27日の会見)として、一般的な布マスクは推奨していません(手作りも含む)。

そこで政府が進めているのが、スイス連邦材料試験研究所(Empa)や国内のテキスタイル業界と連携した保護力の高い布マスクの開発です。ナエフ氏は「不織布マスクの5070%の保護効果を目指す」と発言していました。

27.04.2020 – Point de Presse Coronavirus

スイス東部のテキスタイル企業に「ゴーサイン」

FM1TODAY51日付)で、高い保護力に耐えうる素材として、スイス東部のテキスタイル企業の生地に「ゴーサイン」が出たという記事がありました。

«Erfolgreiche Empa-Tests»: Ostschweizer produzieren Textilmasken für den Bund
Es gibt sie einfarbig schlicht, bunt gemustert oder sogar mit dem Firmenlogo bedruckt: Mundschutzmasken aus Stoff. Aber Vorsicht: Einlagige Baumwollmasken schüt...

Empaはすでに、一般向け保護マスクに必要な推奨事項を公表しています。

Air permeability < 60 Pa/cm2 according to to ISO 9237
通気性< 60 Pa/cm2(ISO9237に基づく)
Splash resistance: no liquid penetration following EN 14683:2019+AC:2019
飛沫耐性:下記EN 14683:2019+AC:2019の液体は通さないこと
Mask filtration efficiency FE ≥ 70 % with a particle size of 1 micrometer.
マスクのろ過捕集効率 1マイクロメートルの粒子、70%以上

これらの基準をクリアするとEmpaの「推奨」マークがつき、一般のマスクと差別化して販売できるのがメリットだといいます。

Empaの研究者がFM1TODAYに語ったところによると、研究所ではすでに数十個のテキスタイルサンプルをテスト済みで「一部は要件を満たした」そうです。

FM1TODAYによると、「合格」をもらった企業の一つが、アッペンツェル・アウサーローデン準州ヘリサウにあるテキスタイル会社Cilander。順調にいけば、まもなく連邦政府にマスクを供給できる見通しで、現在関係各庁と協議中だといいます。生地はCilander社が供給、マスクはザンクト・ガレンのForster Rohner社が縫製するそうです。

Cilander社のCEOFM1TODAYに「1カ月あたり約3040万枚の布マスクを生産できる」とコメント。これらのマスクは認証済みFFP2FFP3マスクの代わりとして、看護師ら医療スタッフに使ってもらうことを想定しているそうです。安心の国内産で、洗って再利用ができゴミも減らせていいことづくめ

政府は近くこのマスクの発注について最終判断する予定で、同社は5月にもこの布マスクの生産を開始し、企業や個人にも供給したいといいます。

すでに生産を始めた企業も

Empaの検査を待たずして生産を始めた企業もあります。同じスイス東部にあるWeberei Appenzell (アッペンツェル製織工場)で、抗ウイルス・バクテリア効果を持つ特殊生地を製造し、顧客に販売しています。

スイスHEIQ会社が開発したウイルス粒子をブロックする技術「Viroblock Technologie」を織り込んだ生地で、それを購入した顧客がマスクに加工する、という流れだそう。

顧客のテキスタイル加工会社Metzlerは、すでにその生地を購入して生産に入っており、5月中旬までには白地のマスクが販売可能だとしています。

Remask project

Empa自身もマスクの「再利用」を目指すプロジェクトを進めています。

研究室では、使用済みマスクの組織を傷付けずに消毒する方法や、長期間の保存、再利用しても品質が落ちないためにはどうしたらいいかなどについて実験が進められています。

Empa - Communication - ReMask
mask corona Switzerland remask

そのほか新しいマスク、マスク部品の開発にも着手しており、例えば既存マスクの外側、内側に追加のレイヤーを付けて耐久性や機能性を強化したり、マスクの内側に水と結合するレイヤーを入れ、分泌物をマスクの内側で止める仕組みなどを研究しています。

そしてもうひとつが、殺ウイルス性の機能を持つ生地の開発。コロナウイルスが付着した時に不活性化する生地を研究中だといいます。こうしたマスクは2018年、Empaと連邦工科大学ローザンヌ校が共同開発した技術が元になっていて、十分な安全性が確認されればコロナ用マスクとしても効果が期待できそうです。

Empaはこのほかに、病院などで使われるマスクの品質チェックも行っています。

マスク生産の国内回帰

スイスはこれまで、医療用マスクのほとんどを輸入(大半が中国)に頼っていました。それが今回のコロナ危機で、生産の国内回帰に目が向けられるようになっていきます。

ザンクト・ガレン州にあるflawaという企業が国内では先陣を切ってマスクの生産を開始。医療用ではない一般向けの保護マスクを週に20万枚作り、企業や個人に供給しています。

大衆紙Blickの動画で、その工場の中の様子が紹介されています。

Coronavirus: Empa forscht an Schutzmasken der Zukunft - Blick
Nicht nur Spitäler und Heime – auch der Bundesrat ist in der Corona-Krise froh um den Rat von Dr. René Rossi. BLICK hat den Empa-Forscher in St. Gallen besucht....

さらに連邦政府とチューリヒ州は共同で、FFP2マスクをフルオートメーションで生産できる機械中国から2台購入しました機械は4月22日にチューリヒ空港に到着。flawaに配備され、フル稼働すれば1日に最大10万枚の生産が可能になります。FFP2マスクはいわゆる下の写真のようなマスクですね。

©️distrelec.ch

そのほか、スイス軍が当面の需要に備えるため、中国から衛生マスク1億枚を調達。4月27日から2週間、大手スーパーなどに卸すほか、薬局にも供給しています。小売店で売られているのは、写真のようなタイプのマスクです。

洗えて再利用でき、なおかつ安全性は国の研究所のお墨付き、という布マスクが出たら、エコ意識の高いスイス人に人気が出そうです。

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