スイスでは、新型コロナウイルスによるロックダウンが始まって1カ月経ったあとも、マスクは人々の間にそれほど普及しませんでした。4月下旬のマスク意識調査で、その理由が明らかになります。言語圏ごとの温度差も浮き彫りになりました。
マスク着用に関する意識調査は国の感染症対策を管轄する保健庁と、調査会社SOTOMOが共同で企画。第1弾のロックダウン緩和(2020年4月27日)が始まる直前の4月19日~23日、オンラインで聞き取り調査を実施しました。
世論調査の結果はこちらから(ドイツ語)

調査は言語圏、年齢、性別、教育などに基づき抽出された、国内の15歳以上の1682人を対象に行われました(正誤率:±2.4%)。
衛生マスク、スイスでは普及いまひとつ
もともとマスクをつける習慣のないスイスですが、新型コロナウイルスの感染が広がった後も、やはり普及が今一つ進んでいないことが調査で明らかになりました。
ロックダウン緩和第1弾が始まる前の4月20日の週の時点で、外出時にマスクを「常に」または「時々」着けて出かけると答えた人は全体の16%にとどまりました。8割近くの人が、マスクをつけないで外出していることになります。
▼「公共の場にマスクを着けて出かけますか?」という問い

※Ja, immer(はい、常に) Ja, teilweise(はい、時々) Nein(いいえ) Weiss nicht/keine Angabe(わからない、無回答)©️sotomo
4月20日の週の新規感染者は1日200人前後と、ピーク時からはかなり減っていたので、マスクの必要性を皆そこまで感じていなかったのかもしれません。ロックダウン中で、外を出歩く人がそもそも少なかったことも考えられます。
調査によると、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)が重症化しやすい高リスクグループの人(65歳以上、基礎疾患持ちの人など)の方が、マスクの着用率が高く出ました。
例えば公共の場でマスクを「時々」「常に」着ける人は65歳以上だと20%、基礎疾患持ちの人だと23%に上昇します。「自分が感染したくない」意識が強く出ているとも言えるでしょう。
また保健庁の統計では、女性よりも男性の方が重症化する傾向が強いことがわかっています。ですがこの調査では、女性(19%)のほうが男性(13%)よりもマスクをつけて出かける人が多かったようです。

さらに面白いのは、ふだんは自宅にいて外部とほとんど接触を持たない人の方(19%)が、そうでない人(13%)よりもマスクを着けて出かける傾向がみられたことでした。調査では、各個人の主観的な危機意識の高さがマスクの着用に反映されている、と指摘しています。
言語圏による温度差も現れました。

スイスにはドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つの公用語があります。

©️スイス連邦外務省
マスクをつけないで出かけると答えた割合が最も多かったのはドイツ語圏(88%)。フランス語圏(75%)、イタリア語圏(50%)と開きが生じています。
▼「マスクを着けて出かけますか?」の問い(言語圏別)

Nein のところがマスクをつけないで出かけると答えた人の割合。左からドイツ語圏、フランス語圏、イタリア語圏©️sotomo
国内でもっとも感染が深刻なのはイタリア語圏のティチーノ州、フランス語圏のジュネーブ州、ヴォー州。ドイツ語圏ではそれほど感染の広がりが酷くなかった(チューリヒ州を除く)ことを考えると、この温度差は想定内といえます。
なぜマスクをしない?
スイス人はなぜマスクをしないか。それはマスクが感染拡大防止に「最も効果的な手段ではないから」と考えていることがわかりました。
意識調査では「マスクはコロナ感染防止の補足的な手段である」という問いに、8割の人が「そう思う」と答えました。
これは保健庁が以前から「2メートルの距離ルール」「手洗い・消毒の衛生対策」が最も重要で、マスクはそれを補うツールに過ぎない、と繰り返してきたことと無関係ではなさそうです。言い換えれば、政府の洗脳が成功したともいえます(笑)。
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