スイス人がコロナ禍でもマスクをしない理由

Swiss News

スイスでは、新型コロナウイルスによるロックダウンが始まって1カ月経ったあとも、マスクは人々の間にそれほど普及しませんでした。4月下旬のマスク意識調査で、その理由が明らかになります。言語圏ごとの温度差も浮き彫りになりました。

マスク着用に関する意識調査は国の感染症対策を管轄する保健庁と、調査会社SOTOMOが共同で企画。第1弾のロックダウン緩和(2020427日)が始まる直前の419日~23日、オンラインで聞き取り調査を実施しました。

世論調査の結果はこちらから(ドイツ語)

Coronavirus: Spezialauswertung Hygienemasken
Auszug aus der periodischen Wirkungsmessung im Auftrag des Bundesamts für Gesundheit BAG Mit der schrittweisen Lockerung der ursprünglichen Massnahmen gegen d...
スイスのロックダウンおさらい
スイスは3月中旬に全国の学校を休校、スーパー・薬局・公共サービスを除く全ての店舗を閉めるロックダウンに入ります。3月下旬のピーク時は感染者が1日1千人単位で増えていきました。その後感染者数のカーブが落ち着き、政府は416日にロックダウンを3段階(4月27日、5月11日、6月8日)に分けて緩和すると発表。店舗の営業再開には①お互いに2メートルの距離をあける②手洗い、消毒などの衛生対策ーという主に2つのルールを設けました。

ただ国民の関心は、隣国オーストリアのように「公共の場でのマスク着用」を義務付けるかどうかーでした。

調査は言語圏、年齢、性別、教育などに基づき抽出された、国内の15歳以上の1682を対象に行われました(正誤率:±2.4%)。

この調査の直後、政府は軍を動員して4億枚のマスクを調達すると約束し、27日からは毎日100万枚ずつ大手スーパー、薬局への供給を始めました。このため現在の国民の意識はかなり変わっている可能性があります。

衛生マスク、スイスでは普及いまひとつ

もともとマスクをつける習慣のないスイスですが、新型コロナウイルスの感染が広がった後も、やはり普及が今一つ進んでいないことが調査で明らかになりました。

ロックダウン緩和第1弾が始まる前の420日の週の時点で、外出時にマスクを「常に」または「時々」着けて出かけると答えた人は全体の16%にとどまりました。8割近くの人が、マスクをつけないで外出していることになります。

▼「公共の場にマスクを着けて出かけますか?」という問い

公共の場で衛生マスクをつけますか?

※Ja, immer(はい、常に) Ja, teilweise(はい、時々) Nein(いいえ) Weiss nicht/keine Angabe(わからない、無回答)©️sotomo

4月20日の週の新規感染者は1日200人前後と、ピーク時からはかなり減っていたので、マスクの必要性を皆そこまで感じていなかったのかもしれません。ロックダウン中で、外を出歩く人がそもそも少なかったことも考えられます。

調査によると、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)が重症化しやすい高リスクグループの人(65歳以上、基礎疾患持ちの人など)の方が、マスクの着用率が高く出ました。

例えば公共の場でマスクを「時々」「常に」着ける人は65歳以上だと20基礎疾患持ちの人だと23に上昇します。「自分が感染したくない」意識が強く出ているとも言えるでしょう。

また保健庁の統計では、女性よりも男性の方が重症化する傾向が強いことがわかっています。ですがこの調査では、女性(19%)のほうが男性(13%)よりもマスクをつけて出かける人が多かったようです。

新型コロナ、男性の方が重症化?スイス
スイス連邦内務省保健庁がまとめた新型コロナウイルス感染者の男女別統計によると、ウイルスに感染して入院中、あるいは入院していた人の58%が男性だった。ほぼ10人に6人が男性の計算だ。死亡者は男性が60%で、男女差がさらに開いた。

さらに面白いのは、ふだんは自宅にいて外部とほとんど接触を持たない人の方(19%)が、そうでない人(13%)よりもマスクを着けて出かける傾向がみられたことでした。調査では、各個人の主観的な危機意識の高さがマスクの着用に反映されている、と指摘しています。

言語圏による温度差も現れました。

スイスにはドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つの公用語があります。

©️スイス連邦外務省

マスクをつけないで出かけると答えた割合が最も多かったのはドイツ語圏(88%)。フランス語圏(75%)、イタリア語圏(50%)と開きが生じています。

▼「マスクを着けて出かけますか?」の問い(言語圏別)

Nein のところがマスクをつけないで出かけると答えた人の割合。左からドイツ語圏、フランス語圏、イタリア語圏©️sotomo

国内でもっとも感染が深刻なのはイタリア語圏のティチーノ州、フランス語圏のジュネーブ州、ヴォー州。ドイツ語圏ではそれほど感染の広がりが酷くなかった(チューリヒ州を除く)ことを考えると、この温度差は想定内といえます。

なぜマスクをしない?

スイス人はなぜマスクをしないか。それはマスクが感染拡大防止に「最も効果的な手段ではないから」と考えていることがわかりました。

意識調査では「マスクはコロナ感染防止の補足的な手段である」という問いに、8割の人が「そう思う」と答えました。

これは保健庁が以前から「2メートルの距離ルール」「手洗い・消毒の衛生対策」が最も重要で、マスクはそれを補うツールに過ぎない、と繰り返してきたことと無関係ではなさそうです。言い換えれば、政府の洗脳が成功したともいえます(笑)

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