スイス人がコロナ禍でもマスクをしない理由

Swiss News

なぜマスクが普及しないのか

もっと多くの人がマスクを着けるべきだ」という問いには、フランス語圏、イタリア語圏の大多数は「そう思う」と賛同しましたが、全体では42にとどまります。

なぜマスクが普及しないと思うのか、という質問(下記のグラフ参照)には、圧倒的に「マスクが手に入りにくい」という声が集まりました。

※(左から)まったくそう思う(10)〜まったくそう思わない(1)の10段階評価。灰色は不明・無回答©️sotomo

上記グラフの1番上が「マスクが手に入りにくいから」という回答で、おおよそ7割が「そう思う」と答えています。特にフランス語圏ではそう答えた人の割合が、ドイツ語圏外、イタリア語圏を上回りました。

スイスはこれまで医療・衛生マスクのほとんどを中国などからの輸入に頼っており、コロナ危機発生後は慢性的なマスク不足に悩まされていました。ただ冒頭でも説明したように、4月27日以降は毎日100万枚ずつ政府が国民にマスクをばらまき始め、国内の生産拠点もできたので、現在は状況がだいぶ緩和されてきたように思います。

その次に賛成が多かったのは「一般の人がマスクをするようになると、医療・衛生関係者のマスクが足りなくなってしまう」という、医療現場への配慮の声でした(上記グラフの2番目)。

マスクが高すぎる(同3番目)、マスクはコロナ感染予防に効果的でない(同4番目)という意見にも多く賛同が集まりました。マスクは快適ではない(同5番目)、公共の場でマスクをつけると居心地が悪い、という人も5割近くに上っています。

個人的には「マスクを着ける習慣がないから」とか「面倒」とか主観的な理由が多いのかな、と思っていましたが、案外シンプルな理由が最多だったのが意外です。医療機関への「思いやり」が多いのも面白い。

調査結果が全ての国民に当てはまるのなら、マスクが手に入りやすくなればそれほど抵抗もなく受け入れられるとも言えそうです。実際5月10日現在の市内では、以前に比べマスクを着ける人がずいぶん増えてきています。

チューリヒ市内のスーパー。マスク姿の人がだいぶ目立ってきました

マスク着用は義務付けるべき?スイス人の答えは

ロックダウン緩和の大きな焦点だった「公共の場でのマスク着用を義務付けするべきか?」の問いには、7割近くが「しなくて良い」と答えました。

ただこれも「場所」によって意見がわかれます。

ある程度接触する人が決まっている職場、学校では半数以上が「しなくていい」でしたが、不特定多数と触れ合うスーパーマーケットでは5割超、公共交通機関では6割、至近距離で接客するサービス業の従業員は8割(顧客は7割)が「着用を義務付けるべき」と答えています。

ただしここにも面白い傾向があって、公共交通機関で「マスク義務付け」に賛成したのは、普段から電車・バスを使わない人、あるいはコロナ危機の間使わないようにしている人、でした。調査期間中も日常的に電車・バスを使っている人で義務付けに賛成したのは4割にとどまっています。

チューリヒ市内を走るトラム©️🇨🇭 Claudio Schwarz

さらに、言語圏別では、イタリア語圏、フランス語圏の人たちは上記グラフのいずれの場面でも義務付けを高く支持したのに対し、ドイツ語圏ではそれほどの賛成は集まりませんでした。

「アジア諸国には遠く及ばず」

誰がマスクをつけるべきか、という問いもありました。病気の人、症状が出ている人や医療関係者については全体の8割が「着けるべき」と答えましたが、これが「全ての大人」になると2割弱にぐっと下がります。

調査の担当者は

スイス国内において、衛生マスクがコロナパンデミックの影響により存在感を示したことは明らかだ。だが東アジア諸国のような「広く一般的に受け入れられ普及している」状況には程遠い。特にドイツ語圏では今でも、衛生マスクが特定の状況下で効果を発揮する補足的な保護手段にとどまり、日常に浸透していないことがわかる。

と結んでいます。

Coronavirus: Spezialauswertung Hygienemasken
Auszug aus der periodischen Wirkungsmessung im Auftrag des Bundesamts für Gesundheit BAG Mit der schrittweisen Lockerung der ursprünglichen Massnahmen gegen d...

この意識調査をどれだけ参考にしたのかはわかりませんが、ロックダウン緩和後の今も、スイスではマスクの着用が義務付けられていません。電車・バスでは違いに2メートルの距離を保てない場合にのみ「強く推奨」とし、利用者の裁量に委ねています。

スイスでマスクが普及しないのは、それほど高い感染予防力があると思われていないこと、また単純に手に入りにくいことーというとてもシンプルな理由が背景にあったことが、この調査で明らかになりました。

「医療関係者に回す分を一般市民が奪ってはいけない」という回答が多かったことも意外でした。Solidarity(連帯)が連呼されるコロナ危機中とはいえ、こんなに他人にやさしかったっけ、スイス人(笑)。

ただ手に入りにくい点については、政府の供給が始まったこともあって状況はかなり変わっています。今同じ調査をしたら、ガラッと異なる結果が出るかもしれません。

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